「在り続けること」がオトナの恋愛か


本格的に梅雨っぽくなって、湿気がうっとうしい反面、お肌はしっとりすべすべでちょっぴりウレシイ毎日。

先週、リリー・フランキー×木村多江主演の「ぐるりのこと。」見てきました。(以下、ややネタバレあり)

前作「ハッシュ!」で、2人のゲイと1人の女の不思議な関係性を細やかに描いた、橋口亮輔監督の最新作。この橋口監督ってヘビーになりそうな題材をウェットすぎないタッチで描くという、絶妙なバランス感覚の持ち主。俳優選びも「そこ来るか!」ってセレクションだし。特に「ハッシュ!」での、元・男鬪呼組の高橋和也のオキャマ演技は必見です。あまりのなりきりぶりに、かつて「男鬪呼組」(この呼称もまた・・)でいちばん男っぽかった彼がよくぞここまで成長したもんだと・・・。

「ぐるりのこと。」は、ある夫婦の10年間を描いた映画。子供が死産したことで妻(木村多江)が鬱病になって、法廷画家のダンナ(リリー・フランキー)がそれを支えつつ、妻の実家の事情やら何やらが色々からんできて、それでもいっしょに生きて行く、という話。

見る前は、今をときめくリリー・フランキーを使うなんてずるい!と思ったけど、これが見た後では、もう彼以外にこのキャストは考えられないの。「女好きでテキトーで、器が小さいと思いきや意外にでかい」っていう役どころが、素なんじゃないかと思うくらいハマってた。で、彼はどんなことがあっても逃げない。夫婦喧嘩した後で、「今日はセックスする曜日だから」って妻に強制されても、逃げない。となりの部屋から苦情が来るくらい妻が半狂乱になっても、逃げない。この、泣き叫ぶ妻をなだめる場面が、この映画のキモなんだよね。妻が鼻水をかんだティッシュを夫が広げて、「うわ〜こんなに」的なことを言うんだわ。アドリブっぽいんだけど。で、妻は「やめて〜!」って言いながら、ちょっと笑ってしまう。このシーンに、彼の妻に対する包み込むようなスタンスが集約されてるの。逃げもせず、その場限りのなぐさめを言うわけでもなく、ただありのままを受け止めるっていう。鼻水全開の顔を見られて、ましてやそのかんだ青っ鼻を見られて、なおかつ笑わせてくれる相手なんて、死ぬまで信用しちゃうじゃん。愛ってそういうことじゃん。すごくリアル。

去年読んだ、山田詠美の「無銭優雅」にも似たような空気を感じたな。
最初は「なんだ?この何も起こらない年寄りの日記みたいな小説は」と思って読んでたんだけど、ラスト5分の1くらいにあれよあれよと事件が起こって、落ち着くべきところに物事が収束する。多少ボロが出ても、ステキなことがなくても、最終的にはそばにいる。ああ、これは恋愛も含めた人間賛歌なんだと。究極的には、愛って「在り続けること」そのものなのかもねぇ。いや、「ただ在り続けること」ってすごく難しいと思うし。
なんだかしみじみしちゃったので、最後に衝撃の事実を。
これ書いてる途中で検索してたら、リリーさんが自分の演じた役について、「彼は自分とはまったく違うタイプなので・・」って言ってるじゃないの。やだぁ、すっかりだまされた!

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